代襲相続とは?孫が相続するケース・範囲・相続分
公開日: 2026/6/12
本記事の情報源について
法務省・国税庁・裁判所・日本年金機構・金融庁等の公的機関の情報をもとに作成しています。 内容の正確性に努めていますが、法令は改正される場合があります。 具体的な手続きについては最新の公的情報をご確認のうえ、司法書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。
目次
代襲相続とは
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来相続人になるはずだった人が相続開始前に亡くなっていたり、一定の事由に該当する場合に、その人の子(孫など)が代わりに相続することをいいます。「代わって(代)、受け継ぐ(襲)」という字のとおり、相続の権利を一代下に引き継ぐ制度です。たとえば、父親が亡くなったとき、本来相続人になるはずだった長男がすでに亡くなっていた場合、長男の子(つまり亡くなった父親にとっての孫)が長男の代わりに相続人となります。この制度は民法887条2項に定められており、相続人となるべき子が相続開始以前に死亡・欠格・廃除のいずれかに該当する場合に発生します。
ℹ 補足:代襲相続が発生するのは「死亡・欠格・廃除」の3つの事由に限られます。相続放棄をした場合は代襲相続が発生しない点が重要なポイントです。
代襲相続が発生する3つの原因
民法887条2項では、代襲相続が発生する原因として次の3つが定められています。いずれも「被相続人より先に亡くなった、または相続権を失った」という状況です。
- •死亡:相続開始(被相続人の死亡)以前に、相続人となるべき子がすでに亡くなっていた場合
- •相続欠格:相続人が故意に被相続人や他の相続人を死亡させた、遺言書を偽造・隠滅したなど、民法891条に定める欠格事由に該当した場合
- •廃除:被相続人が生前に家庭裁判所に申立て、相続人の廃除が認められた場合
相続放棄では代襲相続は発生しない
相続放棄をした場合は、代襲相続が発生しない点に注意が必要です。相続放棄をすると、その人は「初めから相続人でなかった」ものとして扱われます(民法939条)。そのため、放棄した人の子(孫)が代わりに相続人になることはありません。たとえば、長男が相続放棄をした場合、長男の子(孫)は代襲相続人にはなれず、相続権は次の順位の相続人(被相続人の配偶者・他の子・親など)に移ります。この点は「長男が亡くなっている場合」と「長男が放棄した場合」で結果が大きく異なりますので、手続きの判断の際に混同しないようにご注意ください。
死亡と相続放棄の違い(代襲相続が発生するか)
| 原因 | 代襲相続 | 孫の立場 |
|---|---|---|
| 子が相続開始前に死亡 | 発生する | 孫が代わりに相続人になる |
| 子が相続欠格・廃除 | 発生する | 孫が代わりに相続人になる |
| 子が相続放棄 | 発生しない | 孫は相続人にならない |
再代襲:孫も亡くなっていた場合
代襲する相続人(孫)もすでに亡くなっていた場合、さらにその子(曾孫)が代襲します。これを「再代襲」といいます(民法887条3項)。子が死亡し、孫も死亡していれば曾孫が相続人となり、それ以降も同様に繰り返されます。ただし、後述する兄弟姉妹の代襲には再代襲の規定がなく、甥・姪までしか代襲しない点が異なります。
ℹ 補足:再代襲が認められるのは「子の系統(第1順位)」だけです。兄弟姉妹の代襲は甥・姪の一代限りで、再代襲はありません(民法889条2項)。
兄弟姉妹が相続人の場合:甥・姪までが上限
被相続人に子も直系尊属(親・祖父母)もいない場合、兄弟姉妹が相続人となります(第3順位)。この兄弟姉妹が相続開始前に亡くなっていたときは、その子(甥・姪)が代襲相続人となります(民法889条2項)。ただし、甥・姪の子(大甥・大姪)へのさらなる再代襲は認められていません。甥・姪の代で代襲は止まります。この点は子の代襲と異なるため、相続人の確認の際は注意が必要です。
- •兄弟姉妹が相続開始前に死亡 → その子(甥・姪)が代襲相続人になる
- •甥・姪も死亡していた場合 → 再代襲は発生しない(大甥・大姪は相続人にならない)
養子の子の代襲相続
養子縁組と代襲相続の関係にも注意が必要です。養子の子が代襲相続人になれるかどうかは、その子がいつ生まれたかによって異なります。養子縁組後に生まれた子は、養子を被代襲者として代襲相続人になることができます。一方、養子縁組前にすでに生まれていた子は、養子縁組の前に出生しているため、養親(被相続人)との間に法定の親族関係がなく、代襲相続人にはなれません。再婚・養子縁組を含む家族関係では、この点を確認することが重要です。
⚠ 注意:養子の子が代襲できるのは「養子縁組後に生まれた子」のみです。縁組前の子は代襲相続人になれないため、複雑な家族関係の場合は専門家への相談をお勧めします。
代襲相続人の相続分の計算
代襲相続人の相続分は、被代襲者(亡くなった本来の相続人)が受け取るはずだった相続分を引き継ぎます(民法901条)。代襲相続人が複数人いる場合は、その相続分を均等に分けます。具体的な計算例をご覧ください。【例】被相続人(祖父)の相続人が「配偶者(祖母)・長男・次男」だったが、長男が祖父より先に亡くなっており、長男には子(孫)が2人いる場合。まず本来の相続分は配偶者1/2・長男1/4・次男1/4です(子が2人の場合、子の取り分1/2を2等分)。長男が亡くなっているため、長男の相続分1/4を孫2人で均等に分けます。結果として、配偶者1/2・次男1/4・孫A 1/8・孫B 1/8となります。
計算例:配偶者+長男死亡(孫2人)+次男が相続人の場合
| 相続人 | 相続分 | 備考 |
|---|---|---|
| 配偶者(祖母) | 1/2 | 常に相続人 |
| 次男 | 1/4 | 本来の子の取り分1/2を2人で均分 |
| 孫A(長男の子) | 1/8 | 長男の取り分1/4を孫2人で均分 |
| 孫B(長男の子) | 1/8 | 長男の取り分1/4を孫2人で均分 |
代襲相続が発生したときの実務上の注意点
代襲相続が発生すると、相続手続きの必要書類が増えることがあります。代襲関係を証明するためには、通常の相続手続きに加えて、被代襲者(亡くなった本来の相続人)の死亡を証明する戸籍謄本、および代襲相続人(孫など)と被代襲者との親子関係を証明する戸籍謄本が必要となります。遺産分割協議書にも代襲相続人が当事者として署名・押印する必要があります。代襲相続人が未成年の場合は、法定代理人(親権者)が代わって手続きを行います。相続人の確認や戸籍の収集は手間がかかることが多いため、司法書士や弁護士に相談することも有効です。
- •被代襲者(亡くなった相続人)の死亡戸籍謄本が追加で必要になる
- •代襲相続人(孫など)と被代襲者の親子関係を証明する戸籍謄本も必要
- •遺産分割協議書には代襲相続人全員が署名・押印する必要がある
- •代襲相続人が未成年の場合は親権者が法定代理人として手続きを行う
- •相続人が増えるほど遺産分割協議が複雑になるため、早めに専門家へ相談することを検討する
専門家への相談について
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法律相談・税務相談に代わるものではありません。代襲相続は家族構成や過去の縁組・廃除の有無によって判断が複雑になる場合があります。特に養子縁組を含む家族関係、相続欠格・廃除が絡む場合、相続人が多数になる場合は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談されることをお勧めします。
💡 ポイント:法務局の「登記・供託オンライン申請システム」や市区町村の無料法律相談、家庭裁判所の窓口でも相談を受け付けています。まずは身近な窓口に問い合わせてみてください。
よくある質問
Q. 親(子)が相続放棄した場合、孫は代わりに相続できますか?
いいえ、できません。相続放棄をした人は「初めから相続人でなかった」ものとして扱われるため、代襲相続は発生しません。代襲相続が発生するのは、子が死亡・欠格・廃除の場合に限られます。子が放棄した場合、相続権は次の順位の相続人(被相続人の親や兄弟姉妹など)に移ります。
Q. 孫が複数人いる場合、それぞれの相続分はどうなりますか?
代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者(亡くなった親)の相続分を均等に分けます。たとえば長男の相続分が1/4で、長男の子が2人いれば、孫それぞれの相続分は1/8ずつになります。
Q. 被相続人の兄弟姉妹が亡くなっていた場合、その孫(大甥・大姪)も相続できますか?
できません。兄弟姉妹の代襲相続は甥・姪の一代限りです(民法889条2項)。甥・姪もすでに亡くなっていた場合、その子(大甥・大姪)への再代襲は認められていません。この点は子の代襲(再代襲あり)と異なります。
Q. 養子の子は代襲相続人になれますか?
養子縁組後に生まれた子であれば代襲相続人になれます。ただし、養子縁組前にすでに生まれていた子は、養親(被相続人)との間に法定の親族関係がないため、代襲相続人にはなれません。
Q. 代襲相続が発生した場合、手続きはどう変わりますか?
被代襲者の死亡を証明する戸籍謄本と、代襲相続人との親子関係を証明する戸籍謄本が追加で必要になります。また、遺産分割協議書には代襲相続人全員の署名・押印が必要です。書類の収集が複雑になることが多いため、司法書士や弁護士への相談も検討してください。
Q. 被相続人の子が欠格・廃除となった場合、その孫も代襲できますか?
はい、できます。代襲相続は死亡の場合だけでなく、相続欠格・廃除の場合にも発生します(民法887条2項)。子が欠格または廃除となったときは、その子(孫)が代襲相続人となります。
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