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相続放棄の手続き完全ガイド

公開日: 2026/4/30最終更新: 2026/6/13

本記事の情報源について

法務省・国税庁・裁判所・日本年金機構・金融庁等の公的機関の情報をもとに作成しています。 内容の正確性に努めていますが、法令は改正される場合があります。 具体的な手続きについては最新の公的情報をご確認のうえ、司法書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。

目次

  1. 1. 相続放棄とは
  2. 2. 相続放棄の期限
  3. 3. 相続放棄の手続き方法
  4. 4. 相続放棄に必要な書類
  5. 5. 相続放棄の費用
  6. 6. 相続人の立場別:相続放棄の注意点
  7. 7. 相続放棄後でも受け取れる財産とは
  8. 8. 相続放棄後の不動産管理義務と固定資産税(2023年民法改正)
  9. 9. よくある質問

相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産(プラスの財産もマイナスの財産も含む)をすべて受け取らないことを意思表示する法的手続きです。相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとして扱われます。プラスの財産よりも借金などのマイナスの財産が多い場合や、相続に関わりたくない場合に選択されます。

📎民法 第938条(相続放棄の申述)– e-Gov法令📎相続の放棄|法務省

相続放棄の期限

相続放棄の申立は「相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内」に家庭裁判所に行う必要があります。この期間を「熟慮期間」と言います。期限を過ぎると自動的に相続を承認したとみなされ、原則として後から放棄することができなくなります。ただし、正当な理由がある場合は家庭裁判所に期間の伸長を申請できます。被相続人の死亡を後から知った場合は、知った日から3ヶ月が起算されます。

📎民法 第915条(熟慮期間)– e-Gov法令

相続放棄の手続き方法

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して行います。手続きはご自身で行うことも、司法書士や弁護士に依頼することも可能です。

  • •STEP1: 必要書類を揃える(戸籍謄本など)
  • •STEP2: 相続放棄申述書を記入する(裁判所の書式あり)
  • •STEP3: 家庭裁判所に申立書を提出する
  • •STEP4: 家庭裁判所から「照会書」が届いたら回答する
  • •STEP5: 「相続放棄申述受理通知書」が届いたら手続き完了
📎相続放棄申述書(書式・記載例)|裁判所

相続放棄に必要な書類

申立人と被相続人の関係によって必要書類が異なります。基本的に必要なものは以下の通りです。

  • •相続放棄申述書(裁判所の書式を使用)
  • •申立人(放棄する方)の戸籍謄本
  • •被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本または除籍謄本
  • •被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • •申立手数料(収入印紙800円)
  • •郵便切手(裁判所に確認)
📎相続放棄申述書の提出先・添付書類|裁判所

相続放棄の費用

ご自身で手続きをする場合、申立手数料は1件あたり800円(収入印紙)のみです。司法書士に依頼する場合は通常3〜5万円程度の報酬が発生します。弁護士に依頼する場合はさらに高くなることが多いです。複数の相続人が放棄する場合は、それぞれが申立を行う必要があります。

相続人の立場別:相続放棄の注意点

相続放棄をする際、相続人の立場(子・配偶者・兄弟姉妹・親)によって注意点が異なります。特に見落としがちなのが「順位の繰り上がり」です。第1順位の子全員が放棄すると、第2順位の親(祖父母)が相続人になります。さらに親も全員放棄すると、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。これを知らずに放棄すると、親兄弟に突然借金の相続権が発生し、関係が悪化するケースがあります。放棄をする際は、必ず次順位の方に事前に連絡・相談することが重要です。また、配偶者は常に相続人として第1順位の相続人(子など)と並んで相続人になるため、他の相続人が放棄しても配偶者の相続人としての立場は変わりません。代襲相続についても注意が必要で、孫は親(子)が相続放棄した場合には代襲相続人にはなりません。代襲相続が発生するのは親が死亡・欠格・廃除の場合に限られます。

  • •子が全員放棄→親(父母・祖父母の順)が相続人になる
  • •親も全員放棄→兄弟姉妹が相続人になる(兄弟姉妹が死亡の場合は甥・姪)
  • •配偶者は他の相続人が放棄しても常に相続人のまま
  • •孫は親(子)が放棄した場合、代襲相続人として相続人になる(さらに孫も放棄が必要)
  • •放棄前に必ず次順位の親族に相談・連絡することを強くお勧めします

相続放棄後でも受け取れる財産とは

相続放棄をすると「最初から相続人でなかった」ものとみなされます。しかし、「相続財産」ではなく「受取人固有の財産」として受け取れるものがあります。代表例は(1)死亡保険金(受取人が指定されている場合)、(2)遺族年金・未支給年金です。死亡保険金は受取人として指定されていれば相続放棄後も受け取れます(ただし相続税の申告が必要な場合あり)。未支給年金も遺族固有の請求権として受け取れます。一方、預貯金・不動産・有価証券など「相続財産」は受け取れません。放棄後にこれらを受け取ると「法定単純承認(放棄の取り消し)」とみなされる可能性があるため注意が必要です。死亡保険金の非課税枠については、相続放棄をした人は法定相続人の数に算入しない点にも注意が必要です(ただし、みなし相続財産として相続税の計算対象となる場合はあります)。

  • •受け取れるもの:受取人指定の死亡保険金、遺族年金・未支給年金、死亡退職金(受取人指定)
  • •受け取れないもの:預貯金・不動産・株式・指定のない生命保険金など相続財産全般
  • •注意:死亡保険金の非課税枠(500万円×相続人数)は相続放棄者を法定相続人数に含める
  • •受け取った後に相続財産に手をつけると「法定単純承認」となり放棄が無効になる場合がある
📎死亡保険金の課税関係|国税庁

相続放棄後の不動産管理義務と固定資産税(2023年民法改正)

2023年4月の民法改正により、相続放棄後の財産管理義務が明確化されました。改正後は「放棄者が相続放棄時に占有していた財産に限り、管理義務が残る」とされています(民法940条)。つまり、実家に住んでいた場合など、実際に管理・占有している不動産については、次の相続人または相続財産清算人に引き渡すまで管理義務が残ります。固定資産税については、相続放棄が認められれば相続人ではないため、本来は固定資産税の納税義務者ではありません。しかし役所が相続放棄を把握していない場合、納税通知書が届くことがあります。その際は相続放棄申述受理証明書を添えて市区町村に申し出ることが必要です。なお、次の相続人がいない場合は、利害関係人が家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることで対応します。管理義務に違反した場合は損害賠償責任を負う可能性がある点にも注意が必要です。

  • •旧法(〜2023年3月):すべての相続財産の管理義務が残っていた
  • •新法(2023年4月〜):放棄時に現に占有している財産のみ管理義務
  • •固定資産税の納税通知書が届いた場合:相続放棄申述受理証明書を市区町村に提出する
  • •次の相続人がいない場合:利害関係人が家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申立てる
  • •管理義務に違反した場合は損害賠償責任を負う可能性がある
📎相続放棄後の財産管理義務の見直し(民法改正)|法務省

よくある質問

Q. 相続放棄すると借金を引き継がなくて済みますか?

はい、相続放棄をすると被相続人の借金を含むすべての債務を引き継がずに済みます。ただし、すでに遺産を処分・消費していた場合は放棄できないことがあります。また、相続放棄をすると次の順位の相続人(兄弟姉妹など)が相続人になるため、事前に連絡しておくのがよいでしょう。

Q. 相続放棄した後で取り消すことはできますか?

原則として、家庭裁判所が受理した相続放棄を取り消すことはできません。詐欺や脅迫によって放棄させられた場合など、非常に限られたケースのみ取り消しが認められることがあります。判断は慎重に行い、不安な場合は司法書士・弁護士に相談することをお勧めします。

Q. 3ヶ月の期限が過ぎてしまいました。どうすればいいですか?

期限内に申立できなかった場合でも、「被相続人に借金があることを知らなかった」などの特別な事情があれば、知った日から3ヶ月以内に申立できる場合があります。すぐに家庭裁判所または弁護士・司法書士に相談してください。

Q. 相続放棄後、被相続人の連帯保証人だった場合はどうなりますか?

相続放棄をすると、被相続人が連帯保証人だった債務の保証義務は引き継がずに済みます。連帯保証債務は相続財産の「マイナス」として位置づけられるため、相続放棄により引き継がずに済みます。ただし、相続人自身がすでに連帯保証人になっている場合は別の問題です。放棄が連帯保証人としての自分自身の責任には影響しません。複雑なケースについては弁護士に確認することをお勧めします。

Q. 相続放棄の手続き中に被相続人の財産を処分してしまいました。放棄できますか?

相続財産を「処分」すると、法律上「法定単純承認」(相続を承認したとみなされる行為)に該当し、放棄できなくなる可能性があります。処分の範囲は広く、預金の引き出し・不動産の売却・動産の処分などが含まれます。ただし、葬儀費用のための少額の引き出しや、日常的な管理行為(電気・ガスの停止手続きなど)は処分に当たらないと解釈されることが多いです。「処分してしまったかもしれない」と不安な場合は、すぐに弁護士または司法書士に相談してください。

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