不動産の共有名義はなぜ問題になるのか|売却できない・共有者が増える仕組み
公開日: 2026/6/12
本記事の情報源について
法務省・国税庁・裁判所・日本年金機構・金融庁等の公的機関の情報をもとに作成しています。 内容の正確性に努めていますが、法令は改正される場合があります。 具体的な手続きについては最新の公的情報をご確認のうえ、司法書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。
目次
不動産の「共有名義」とは
共有名義とは、1つの不動産を複数の人が割合(持分)で所有している状態のことです。たとえば「兄が2分の1、弟が2分の1」のように登記されている場合が共有名義にあたります。相続の場面では、遺産分割協議がまとまらないまま相続登記をしたり、「とりあえず法定相続分のまま」登記したりするときに共有名義が生まれます。共有名義自体は法律上禁じられていませんが、その後の利用・処分に際して関係者全員の合意が必要になる場面が多く、時間の経過とともに選択肢が狭まる構造があります。
売却・建替えには全員の同意が必要(民法251条)
共有不動産の全体を売却したり、建物を取り壊して建て替えたりする行為は「変更行為」に該当します。民法251条は、変更行為には共有者全員の同意が必要と定めています。共有者が2人のうちの1人が「売りたくない」と言えば、もう1人が売却を希望しても全体を売ることはできません。共有者が遠方に住んでいる、連絡が取れない、意見が合わないといった状況になると、不動産を有効活用できないまま維持費や固定資産税だけがかかり続けることになります。
ℹ 補足:賃貸借契約の締結など「管理行為」は持分価格の過半数で決定できます(民法252条)。ただし「過半数」は人数ではなく持分割合の合計で判断します。
世代を経るごとに共有者が増える仕組み
共有名義のもう一つの問題が、相続を繰り返すことで共有者が増えていく点です。たとえば兄弟2人で共有している不動産があるとします。兄が亡くなると、兄の持分はその配偶者と子どもたちに相続されます。今度は元の弟と、兄の遺族(配偶者・子ども複数人)が共有者になります。さらに世代が下ると、甥・姪・その配偶者まで共有者に加わることがあります。こうして当初2人だった共有者が、10人・20人規模に膨らむケースは珍しくありません。共有者が増えるほど全員の合意を取り付けることは難しくなり、不動産の処分はより困難になります。
持分のみの売却・共有物分割請求という選択肢
自分の持分だけを第三者に売却することは、他の共有者の同意なく行うことができます。また、共有者は「共有物分割請求」(民法256条)によって、裁判所を通じて共有関係の解消を求めることも可能です。ただし、持分だけの売却は買い手が限られるため、市場価格を大きく下回る価格でしか売れないことが多いです。また、見知らぬ第三者が共有者になることで、残った共有者にとっても管理が難しくなる場合があります。共有物分割請求は最終的な手段として機能しますが、訴訟になると時間と費用がかかります。
- •持分のみの売却:他の共有者の同意は不要だが、買い手が限られ価格が下がりやすい
- •共有物分割協議:共有者全員で話し合い、現物分割・代償分割・換価分割のいずれかで解消する
- •共有物分割請求(裁判):協議がまとまらない場合に裁判所に申立て、強制的に共有関係を解消する
2023年改正:所在等不明共有者への対応
共有者の所在が分からなくなる問題に対応するため、2023年の民法改正で新たな制度が設けられました。所在等が不明な共有者がいる場合、裁判所の決定を得ることで、その持分を他の共有者が取得したり、持分を譲渡したりできるようになっています(民法262条の2・262条の3)。この制度を利用するには裁判所への申立てと一定の手続きが必要ですが、連絡が取れない共有者がいるために身動きが取れなくなっていたケースへの一つの対応策となります。具体的な手続きについては弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
💡 ポイント:2023年改正で創設された制度は、施行後に共有名義になった不動産だけでなく、既存の共有不動産にも適用されます。長年放置していた共有不動産の整理に活用できる可能性があります。
共有名義を解消する方法
共有名義の問題を将来に先送りしないためには、できるだけ早い段階で解消を検討することが有効です。主な解消方法は次の3つです。遺産分割の段階(相続発生直後)が最も話し合いをしやすいタイミングであり、共有名義にしないことがまず優先されます。
- •単独名義化(遺産分割協議):相続発生後の遺産分割協議で、不動産を1人の相続人に帰属させる。代わりに他の相続人には預貯金や代償金を割り当てる(代償分割)
- •換価分割:不動産を売却し、売却代金を相続人間で分ける。誰も不動産を必要としない場合に有効
- •共有物分割協議:すでに共有名義になっている不動産について、共有者間で話し合い現物分割・代償分割・換価分割により共有関係を解消する
専門家への相談について
共有名義の不動産を解消するには、相続人・共有者全員の合意形成と、登記・税務の両方の手続きが絡みます。特に代償金が発生する場合は相続税や贈与税の取り扱いも確認が必要です。また、すでに共有者が多数になっている場合や所在不明の共有者がいる場合は、弁護士や司法書士などの専門家に早めに相談することをお勧めします。本記事は情報提供を目的としており、個別の法律・税務判断の根拠とはなりません。
⚠ 注意:共有名義のまま相続登記を先送りにすると、2024年4月から義務化された相続登記(3年以内)に違反する可能性があります。まず登記義務の期限を確認した上で、共有解消の方針を決めることをお勧めします。
よくある質問
Q. 共有名義の不動産は、共有者の一人だけで売ることはできませんか?
不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要です(民法251条)。一方、自分の持分だけを売ることは単独で可能ですが、共有持分のみの購入を希望する買い手は少なく、市場価格よりも低い金額になることが多いです。また、見知らぬ第三者が共有者になることで残りの共有者に不都合が生じる場合もあります。
Q. 親が亡くなったとき、不動産を「とりあえず法定相続分で」登記してもよいですか?
法律上は可能ですが、共有名義のままにしておくと、後で全員の合意を得て売却・処分しようとする際に手続きが複雑になります。また世代が下ると共有者が増え、解消がさらに難しくなります。相続発生直後の遺産分割協議で単独名義にするのが、将来の選択肢を広げるうえで有効です。
Q. 共有者が連絡を取れない状態になった場合、どうすればよいですか?
2023年の民法改正で、所在等が不明な共有者がいる場合に裁判所の決定を経てその持分を取得・譲渡できる制度が設けられました(民法262条の2・262条の3)。ただし裁判所への申立てが必要です。状況に応じて弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。
Q. 共有物分割請求とは何ですか?費用はどのくらいかかりますか?
共有物分割請求とは、共有者が裁判所に共有関係の解消を求める手続きです(民法256条)。まず共有者間での協議を試み、まとまらない場合に裁判(共有物分割訴訟)に進みます。弁護士費用や裁判費用は不動産の評価額や事案の複雑さによって異なります。まずは弁護士に費用感を確認した上で検討されることをお勧めします。
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