相続手続きナビ
トップ/相続手続きガイド/みなし相続財産とは|生命保険金・死亡退職金の扱いと非課税枠

みなし相続財産とは|生命保険金・死亡退職金の扱いと非課税枠

公開日: 2026/6/12

本記事の情報源について

法務省・国税庁・裁判所・日本年金機構・金融庁等の公的機関の情報をもとに作成しています。 内容の正確性に努めていますが、法令は改正される場合があります。 具体的な手続きについては最新の公的情報をご確認のうえ、司法書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。

目次

  1. 1. みなし相続財産とは
  2. 2. 死亡保険金(生命保険金)の扱い
  3. 3. 死亡退職金の扱い
  4. 4. 非課税枠の計算方法
  5. 5. 相続放棄した人が保険金を受け取る場合
  6. 6. 遺産分割との関係:受取人固有の財産だが「特別受益」の問題も
  7. 7. 弔慰金の非課税範囲
  8. 8. 生前贈与加算とみなし相続財産の関係
  9. 9. 専門家への相談について
  10. 10. よくある質問

みなし相続財産とは

みなし相続財産とは、民法上は「相続財産」ではないものの、相続税法上は相続や遺贈によって取得したものとみなして課税される財産のことです(相続税法3条)。 民法では、被相続人が亡くなった時点で所有していた財産だけが相続財産となります。ところが、たとえば生命保険金は「保険契約に基づき受取人が受け取る固有の権利」であり、被相続人が死亡した瞬間に受取人のものになるため、厳密には被相続人の遺産ではありません。しかし経済的な実質は遺産と変わらないため、相続税法は一定の財産を「相続財産とみなして」課税対象に含めています。 代表的なみなし相続財産は「死亡保険金」と「死亡退職金」の2種類です。どちらも非課税枠が設けられており、枠内に収まる部分は相続税がかかりません。

死亡保険金(生命保険金)の扱い

被相続人が保険料を負担していた生命保険契約で、被相続人の死亡を原因として支払われる保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。受取人が法定相続人かどうかにかかわらず、被相続人が保険料を負担していた点が課税の要件です。 保険料の負担者が被相続人以外の場合は取り扱いが異なります。受取人=保険料負担者であれば一時所得、受取人と保険料負担者が別人(いずれも被相続人以外)であれば贈与税の対象となります。相続税の申告に際しては、保険証券や支払調書で保険料負担者を確認することが重要です。

生命保険金の課税区分(保険料負担者別)

被保険者保険料負担者受取人課税区分
被相続人被相続人相続人など相続税(みなし相続財産)
被相続人受取人本人受取人本人一時所得(所得税)
被相続人第三者第三者贈与税

死亡退職金の扱い

被相続人の死亡を原因として雇用先から支払われる退職金・弔慰金のうち、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものはみなし相続財産として相続税の課税対象になります(相続税法3条1項2号)。 3年を超えて支給が確定した場合は退職所得として所得税の対象となり、相続税は課税されません。受取人が法定相続人の場合は後述の非課税枠を利用できます。 死亡退職金とは別に、被相続人の死亡に際して弔慰金が支給されることもあります。弔慰金については非課税の範囲が別途定められています(後述)。

ℹ 補足:死亡後3年以内に支給が確定した退職金→相続税(みなし相続財産)。3年超に確定した退職金→退職所得として所得税の対象。支給確定の時期によって課税区分が変わるため、勤務先から「いつ支給が確定したか」を確認しておくと安心です。

非課税枠の計算方法

死亡保険金と死亡退職金には、それぞれ「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が設けられています(相続税法12条)。 たとえば法定相続人が配偶者・子2人の計3人であれば、死亡保険金の非課税枠は500万円 × 3=1,500万円、死亡退職金の非課税枠も同じく1,500万円となります。死亡保険金と死亡退職金の非課税枠は独立して計算されるため、合計で最大3,000万円が非課税になる計算です。 非課税枠を超えた部分のみ課税対象(相続税の課税価格)に算入されます。なお、この非課税枠を計算するための「法定相続人の数」には、相続放棄した人も含めます(後述の注意点もあわせて確認してください)。

非課税枠の計算例(法定相続人3人の場合)

種類非課税枠受取保険金の例課税対象額
死亡保険金500万円 × 3人 = 1,500万円2,000万円500万円
死亡退職金500万円 × 3人 = 1,500万円1,000万円0円(枠内)
合計最大3,000万円3,000万円500万円

相続放棄した人が保険金を受け取る場合

生命保険金は受取人固有の財産であるため、相続放棄をした場合でも、受取人として指定されていれば保険金を受け取ることができます。これは相続放棄によって「最初から相続人でなかった」とみなされるとしても変わりません。 ただし、相続放棄した人は非課税枠を利用することができません(相続税法12条)。また、非課税枠の計算に使う「法定相続人の数」には相続放棄した人も含めるため、枠の総額が減るわけではありません。 まとめると、相続放棄した受取人は「保険金は受け取れるが、自分の分の非課税枠は使えない」という状態になります。結果として、相続放棄をした受取人が受け取った保険金は全額が相続税の課税対象に算入される点に注意が必要です。

⚠ 注意:相続放棄した人が受取人に指定されている場合:保険金は受け取れますが、非課税枠(500万円 × 法定相続人数)は適用されません。保険金の全額が相続税の課税対象となります。相続放棄を検討する際は、この点も税理士に確認することをお勧めします。

遺産分割との関係:受取人固有の財産だが「特別受益」の問題も

死亡保険金・死亡退職金はいずれも受取人固有の財産であり、遺産分割の対象外となります。特定の相続人が受取人に指定されていても、その保険金は遺産分割協議の席に「出す必要がない」財産です。 ただし、判例は「死亡保険金の受け取りが他の相続人との比較で著しく不公平と認められる場合には、特別受益に準じて持戻しを認める余地がある」としています(最高裁平成16年10月29日決定)。著しい不公平かどうかは、遺産総額に対する保険金の割合・被相続人の意図・各相続人の生活状況などを総合的に考慮して判断されます。 実務上、大半のケースでは特別受益の主張は認められませんが、相続人間で保険金の額が極端に偏っている場合は、事前に弁護士に相談することが望ましいでしょう。

ℹ 補足:死亡保険金は原則として遺産分割の対象外ですが、受取額が著しく不公平と認められる場合は、裁判所が特別受益に準じた取り扱いを認めることがあります。

弔慰金の非課税範囲

勤務先から支払われる弔慰金(見舞金)には、以下の非課税限度額が設けられています。限度額を超えた部分は死亡退職金として扱われ、みなし相続財産に含まれます。 業務上の死亡の場合は「被相続人の死亡当時の普通給与(賞与を除く)の3年分」、業務外の死亡の場合は「同6ヶ月分」が非課税の上限となります(相続税法基本通達3-20)。 ここでいう「普通給与」は月額の給与(賞与を除く)を指します。たとえば月給40万円で業務外死亡の場合、40万円 × 6ヶ月=240万円が弔慰金の非課税限度額となり、それを超える部分は死亡退職金として非課税枠の計算に含まれます。

弔慰金の非課税限度額

死亡の区分非課税限度額
業務上の死亡(労災など)普通給与(賞与除く) × 36ヶ月(3年分)
業務外の死亡普通給与(賞与除く) × 6ヶ月分

生前贈与加算とみなし相続財産の関係

相続税の計算では、被相続人が亡くなる前の一定期間内に行われた生前贈与が相続財産に加算されます(生前贈与加算)。2024年以降の贈与から段階的に加算対象期間が延長され、最終的に相続開始前7年以内の贈与が加算対象となります。 みなし相続財産(死亡保険金・死亡退職金)自体は生前贈与ではないため、生前贈与加算の対象にはなりません。ただし、被相続人が生前に保険料の一部を贈与した場合など、保険料の負担関係によっては贈与税・所得税の問題が生じることがあります。 なお、「相続時精算課税制度」を選択している場合は、その贈与額が相続財産に加算されます。みなし相続財産と生前贈与の両方が絡む場合は、全体の税負担をシミュレーションしたうえで専門家に相談することが重要です。

専門家への相談について

みなし相続財産の扱いは、受取人の設定・保険料の負担者・相続放棄の有無・遺産総額の構成によって相続税額が大きく変わります。特に複数の保険契約がある場合や、相続放棄を検討している場合、保険金の受取人が偏っている場合は、個別の状況に即した判断が必要です。 この記事は情報提供を目的としており、税務・法律相談に代わるものではありません。具体的な税額の計算や申告については、税理士に早めに相談することをお勧めします。相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」です。

💡 ポイント:税理士への相談は、相続開始後できるだけ早い段階(目安は3〜4ヶ月以内)が理想です。申告期限(10ヶ月)が近づくと、書類収集や評価作業に十分な時間が取れなくなることがあります。

よくある質問

Q. 相続放棄すると生命保険金はもらえなくなりますか?

受取人として指定されていれば、相続放棄をした場合でも生命保険金は受け取ることができます。生命保険金は受取人固有の財産であり、相続財産ではないためです。ただし、相続放棄した人には非課税枠(500万円 × 法定相続人数)が適用されず、受け取った保険金の全額が相続税の課税対象になります。

Q. 死亡保険金と死亡退職金の非課税枠は合算されますか?

合算されません。死亡保険金の非課税枠(500万円 × 法定相続人数)と死亡退職金の非課税枠(500万円 × 法定相続人数)はそれぞれ独立して計算されます。法定相続人が3人の場合、死亡保険金で最大1,500万円、死亡退職金でさらに最大1,500万円が非課税となります。

Q. 非課税枠を計算するための「法定相続人の数」に相続放棄した人は含めますか?

はい、含めます。非課税枠の計算における「法定相続人の数」は、相続放棄した人も含めた法定相続人の数で計算します(相続税法12条)。相続放棄によって非課税枠の総額が減ることはありません。

Q. 死亡退職金が支払われるまでに時間がかかりそうですが、何か注意点はありますか?

死亡後3年以内に支給が確定した退職金はみなし相続財産として相続税の対象になります。3年を超えて支給が確定した場合は退職所得として所得税の対象となります。支給確定の時期が3年をまたぐかどうかで課税区分が変わるため、勤務先に確認のうえ、税理士に相談することをお勧めします。

Q. 受取人が指定されていない生命保険金はどう扱われますか?

受取人が指定されていない(または「相続人」と記載されている)場合、保険金は相続財産として遺産分割の対象となります。この場合は民法上の相続財産として扱われるため、相続放棄をした人は受け取ることができません。また、非課税枠(500万円 × 法定相続人数)も適用されない可能性があるため、保険証券で受取人の設定を確認しておくことが重要です。

Q. みなし相続財産は遺産分割協議書に記載が必要ですか?

死亡保険金・死亡退職金は受取人固有の財産であり、原則として遺産分割の対象外のため、遺産分割協議書への記載は不要です。ただし、相続税の申告書には課税価格として記載が必要です。相続人間の合意のもとで遺産分割協議書に任意で記載することは可能ですが、法的な義務はありません。

関連ツール

基礎控除・相続税試算ツール

基礎控除額と相続税の概算を簡単計算

試してみる

財産目録作成ツール

預貯金・不動産・株式などの財産を一覧化

試してみる

生前贈与シミュレーター

年110万円枠と7年加算ルールで効果を試算

試してみる

あなたの状況に合わせた手続きリストを作成

5つの質問に答えるだけで、あなたに必要な手続きと期限を自動で整理します。 相続放棄・相続税・登記など、見落としがちなタスクを一覧管理できます。

無料で手続きリストを作る

登録5分・クレジットカード不要

関連ガイド

相続税の計算・申告手続き完全ガイド

相続税の基礎控除・計算方法・申告期限・必要書類を解説。相続税がかかるかどうかの判断から、申告手続きの流れや納付方法までわかりやすく説明します。

詳しく読む →

生命保険金の相続手続き完全ガイド

亡くなった方の生命保険金の受け取り手続きを解説。死亡保険金の請求方法・必要書類・期限、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人数)、みなし相続財産の扱いを説明します。

詳しく読む →

相続放棄の手続き完全ガイド

相続放棄の手続き方法を徹底解説。3ヶ月の期限・家庭裁判所への申立書類・費用・必要書類・注意点まで、相続放棄の進め方をわかりやすく説明します。

詳しく読む →

相続税の基礎控除の計算方法|自分で計算する手順と相続税がかかるケース

相続税の基礎控除額の計算方法を解説。3,000万円+600万円×法定相続人数の公式の使い方、法定相続人の数え方、相続税がかかるケース・かからないケースを具体例で説明します。

詳しく読む →

本記事は情報提供を目的としており、法律相談・税務相談ではありません。具体的な判断は司法書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。

ガイド一覧トップ運営者情報利用規約プライバシーポリシー