相続税の計算・申告手続き完全ガイド
公開日: 2026/4/30最終更新: 2026/6/13
本記事の情報源について
法務省・国税庁・裁判所・日本年金機構・金融庁等の公的機関の情報をもとに作成しています。 内容の正確性に努めていますが、法令は改正される場合があります。 具体的な手続きについては最新の公的情報をご確認のうえ、司法書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。
目次
相続税とは
相続税は、相続や遺贈により財産を取得した場合にかかる税金です。ただし、すべての相続に相続税がかかるわけではなく、遺産の合計額が「基礎控除額」を超えた場合のみ申告・納税が必要になります。実際には日本全体の相続のうち、相続税が発生するのは約9〜10%程度と言われています。
相続税の基礎控除額
相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算します。例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人(計3人)の場合、基礎控除は3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円となります。すべての遺産(不動産・預貯金・株式・生命保険金など)の合計がこの金額以下であれば、相続税の申告は不要です。
相続税の申告期限と納付
相続税の申告・納税の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。例えば、4月1日に亡くなった場合、翌年2月1日が期限となります。期限を過ぎると延滞税や加算税が発生するため、注意が必要です。税務署への申告と納税を同時に行います。
相続税申告の流れ
相続税の申告は、次のステップで進めます。相続財産の評価は専門的な知識が必要なため、税理士に依頼するのが一般的です。
- •STEP1: 相続人の確定(戸籍謄本の収集)
- •STEP2: 遺産の全体像を把握する(財産目録の作成)
- •STEP3: 各財産の評価額を算定する(不動産は路線価等を使用)
- •STEP4: 遺産分割協議を行い、誰が何を相続するか決める
- •STEP5: 相続税申告書を作成し、税務署に提出・納税する
相続税に関する主な控除・特例
相続税には様々な控除・特例があり、これらを適用することで税額を大幅に減らせることがあります。代表的なものを紹介します。なお、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は「適用することで税額がゼロになる場合でも申告が必要」な点に注意してください。これらの特例は申告して初めて受けられるため、特例適用で結果的に納税額が0円になるケースでも、相続税の申告書を期限内に提出する必要があります。
- •配偶者の税額軽減:配偶者は1億6,000万円または法定相続分まで非課税(適用には申告が必要)
- •小規模宅地等の特例:自宅等の土地の評価額が最大80%減額(適用には申告が必要)
- •生命保険金の非課税枠:500万円 × 法定相続人の数まで非課税
- •死亡退職金の非課税枠:500万円 × 法定相続人の数まで非課税
- •未成年者控除・障害者控除:該当する相続人の税額から一定額を控除
- •相次相続控除:10年以内に続けて相続が発生した場合に一定額を控除
相続税の課税対象になる財産・ならない財産
相続税の計算では、まず「何が課税対象の財産か」を把握する必要があります。預貯金や不動産といった一般的な財産のほか、被相続人が亡くなったことで支払われる死亡保険金・死亡退職金は「みなし相続財産」として課税対象に含まれます(ただし非課税枠あり)。一方で、墓地・仏壇・仏具などの祭祀財産は原則として非課税です。また、被相続人が亡くなる前3〜7年以内(贈与の時期により異なります)に相続人へ贈与した財産は、相続財産に加算して計算する「生前贈与加算」の対象になる場合があります。マイナスの財産(借入金・未払いの医療費・税金など)や葬式費用は、プラスの財産から差し引いて計算します。
- •課税対象:預貯金・不動産・有価証券・現金・貴金属・自動車などの財産全般
- •みなし相続財産(課税対象・非課税枠あり):死亡保険金・死亡退職金
- •非課税財産:墓地・墓石・仏壇・仏具などの祭祀財産、一定の寄附財産
- •債務控除:借入金・未払いの医療費・未払いの税金などのマイナスの財産
- •葬式費用:通夜・葬儀・火葬の費用などは控除可(香典返し・初七日法要は対象外)
- •生前贈与加算:相続開始前一定期間内に相続人へ贈与した財産は加算される場合あり
相続税の税率と計算の流れ
相続税は「遺産総額が多いほど税率が上がる」累進課税の仕組みです。計算は(1)課税価格の合計から基礎控除を引いて「課税遺産総額」を求め、(2)それを法定相続分で按分して各人の税額を算出し、(3)合計してから実際の取得割合で再配分する、という独特の手順を踏みます。下表は相続税の速算表(法定相続分に応ずる各取得金額に対する税率)です。実際の税額計算は複雑なため、目安としてご覧ください。
相続税の速算表(法定相続分に応ずる取得金額ごとの税率)
| 取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | なし |
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
⚠ 注意:上記の税率は「法定相続分で按分した金額」に対してかかるもので、遺産総額にそのまま掛けるわけではありません。計算を誤ると納税額を大きく見誤るため、概算を超える判断は税理士に確認することをお勧めします。
相続税が払えない場合の対応(延納・物納)
相続税は原則として現金一括で納付しますが、不動産が多く現金が少ないなどの理由で一括納付が難しい場合があります。その場合、一定の要件を満たせば「延納」(分割払い)や「物納」(不動産などの現物で納付)が認められることがあります。いずれも申告期限までに申請が必要で、要件の判定が複雑なため税理士への相談が前提となります。安易に相続財産の不動産を売り急ぐ前に、納付方法の選択肢を確認することが大切です。
- •延納:相続税を分割で納付する制度(利子税がかかる・担保が必要な場合あり)
- •物納:現金での納付が困難な場合に不動産などで納付する制度(延納でも難しい場合の最終手段)
- •いずれも申告期限(10ヶ月)までに申請書の提出が必要
- •納税資金が不足する場合は、相続財産の一部売却や金融機関の相続向けローンも選択肢
よくある質問
Q. 相続税の申告は自分でできますか?
申告書の提出自体は自分でも可能ですが、財産の評価(特に不動産)が複雑なため、税理士への依頼が一般的です。不動産の評価を誤ると、払いすぎや申告漏れにつながります。特例を適用するためには正確な申告が必要なため、10ヶ月という期限が近づいたら早めに税理士に相談することをお勧めします。
Q. 相続税の申告期限に間に合わないときはどうすれば?
期限に間に合わない場合でも、まず期限内に申告書を提出することが重要です。詳細が確定していなくても「未分割申告」として一旦申告し、後から修正申告することができます。申告なしで期限を過ぎると、「無申告加算税(15〜20%)」と「延滞税」が発生します。
Q. 相続財産に借金が含まれる場合はどうなりますか?
借金(債務)は相続財産からマイナスして計算します。借金の額が大きい場合は相続税がかからないこともあります。借金が財産を大きく上回る場合は、相続放棄を検討することが有効な場合があります。
Q. 配偶者は相続税がかからないと聞きましたが本当ですか?
配偶者には「配偶者の税額軽減」という大きな特例があり、配偶者が取得した遺産が1億6,000万円までか、法定相続分相当額までであれば相続税がかかりません。ただし、この特例は申告して初めて適用されるため、特例適用で税額が0円になる場合でも相続税の申告書を期限内に提出する必要があります。また、配偶者に財産を集中させると次の相続(二次相続)で子の負担が大きくなることがあるため、目先の税額だけでなく将来も含めて検討することをお勧めします。
Q. 生命保険金にも相続税がかかりますか?
受取人が指定された死亡保険金は、相続財産ではなく受取人固有の財産ですが、税法上は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。例えば法定相続人が3人なら1,500万円までの保険金は非課税となります。非課税枠を超えた部分が課税対象です。なお、相続放棄をした人は非課税枠の計算上の法定相続人数には含めますが、放棄者自身は非課税の適用を受けられない点に注意が必要です。
Q. 相続税はいつ・どうやって払うのですか?
相続税は、申告期限と同じく「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」に、原則として現金で一括納付します。納付先は税務署のほか、金融機関やコンビニ(30万円以下の場合)、e-Taxによる電子納税などが利用できます。現金一括が難しい場合は、要件を満たせば分割払いの「延納」や現物納付の「物納」が認められることがありますが、いずれも期限内の申請が必要です。納税資金の準備は早めに進めることをお勧めします。
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