家族信託の仕組み・費用・遺言や成年後見との違い

公開日: 2026/5/15

本記事の情報源について

法務省・国税庁・裁判所・日本年金機構・金融庁等の公的機関の情報をもとに作成しています。 内容の正確性に努めていますが、法令は改正される場合があります。 具体的な手続きについては最新の公的情報をご確認のうえ、司法書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。

家族信託とは

家族信託は、財産の所有者(委託者)が信頼する家族(受託者)に財産の管理・処分を任せ、利益を受ける人(受益者)を指定する契約です。認知症で判断能力が低下した後も、受託者が委託者本人のために財産を管理できる点が最大のメリットです。

ℹ 補足:信託銀行が提供する『金銭信託』とは別物です。家族信託は信託銀行を介さず、家族間の契約で完結します。

3つの登場人物

信託契約には次の3つの役割があります。

役割誰がなるか権限・性質
委託者財産の元の所有者(親)信託契約を結び、財産を受託者に預ける
受託者管理を任される家族(子など)財産の管理・運用・処分を行う
受益者利益を受ける人(多くは親本人)管理されている財産の利益を受け取る

💡 ポイント:委託者 = 受益者(自益信託)の構成が最も一般的で、贈与税がかかりません。

遺言・成年後見との違い

目的が似ている3つの制度を整理します。

制度効力発生判断能力低下時財産処分の柔軟性
遺言書死亡後対応不可△ 死後のみ
成年後見判断能力低下後対応可能✗ 家裁の許可が必要、自宅売却困難
家族信託契約締結時対応可能○ 契約内容次第で柔軟

家族信託が向くケース

次のような状況では家族信託が特に有効です。

  • 親が認知症になった後も賃貸不動産を管理・売却できるようにしたい
  • 障害のある子の生活費を、自分の死後も計画的に渡したい
  • 数次相続(孫の代まで)の承継先を指定したい
  • 事業承継で後継者に経営権をスムーズに移したい

費用の目安

家族信託の設定にかかる主な費用です。

項目金額目安備考
コンサルティング費用信託財産の0.5〜1.5%司法書士・弁護士・税理士への依頼
公正証書作成費用5〜10万円公証役場で支払う
不動産信託登記費用登録免許税0.4%+司法書士報酬不動産を信託する場合
税理士による税務確認5〜30万円贈与税課税の有無確認

⚠ 注意:信託財産が3,000万円なら総額50〜100万円程度が目安。遺言書(数万円)より高額です。費用対効果を検討してください。

家族信託の落とし穴

便利な制度ですが、注意点もあります。

  • 信託財産から生じた損失は他の所得と損益通算できない(不動産の赤字を給与所得と通算できない)
  • 受託者の事務負担が重い(毎年の信託計算書作成など)
  • 受託者の暴走を止める仕組みが弱い(信託監督人を立てるのが安全)
  • 金融機関で対応していない銀行口座あり
  • 遺留分は信託でも回避できない

始め方の手順

家族信託の検討から開始までの流れです。

  • 1. 家族会議で信託の目的・財産・受託者を決める
  • 2. 司法書士・弁護士などの専門家に相談
  • 3. 信託契約書を作成(公正証書化が安全)
  • 4. 不動産があれば信託登記、預金は信託口口座を開設
  • 5. 信託開始後、受託者が財産を管理

よくある質問

Q. 親が認知症になってからでも家族信託できますか?

原則できません。家族信託は委託者本人の判断能力が必要です。診断書で軽度のうちなら可能なケースもありますが、進行している場合は成年後見制度に移行することになります。

Q. 家族信託で相続税の節税はできますか?

信託そのものに節税効果はありません。財産は最終的に受益者の相続税の対象になります。節税目的なら生前贈与・小規模宅地特例などを別途検討します。

Q. 受託者になる家族の負担はどのくらいですか?

信託財産の管理・運用・帳簿付け・確定申告(信託計算書の作成)など継続的な事務が発生します。受託者には金銭面・時間面の負担覚悟が必要です。

Q. 家族信託と遺言は併用できますか?

併用できます。信託した財産以外の財産については遺言で承継先を指定するのが一般的です。

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